イタリア買付道中記 2005
イタリア買付道中記 2005 その3
「パルマ」での大きな目的の一つは「パルミジャーノ・レッジャーノ」の製造過程を見る事でした。
このチーズの名前の由来はその発祥地と深く結びついているのです。
Parma:パルマ、Reggio-Emilia:レッジョ・エミリア、Modena:モデナとMantova:マントヴァ、
及びBologna:ボローニャの一部にまたがるこれらの地域にのみ最適な乳を絞る事が出来る牛と
その為の飼料が育つに良好な気候条件が整います。
そんな訳で特に「パルマの、レッジョ(エミリア)の」という意味合いで、
Parmigiano-Reggiano:パルミジャーノ・レッジャーノという名前がついているのです。
この大型熟成チーズをつくるのに必要な
・天然の飼葉(かいば、エサ):植物性のみでサイロなどに貯蔵しない
・生乳:搾乳は1日2回のみ
・子牛の胃袋にある酵素
・塩
以外は一切の添加物を入れずに作る事が出来るエリアとなると必然的に
範囲が絞られるわけです。
そんな環境を守りつつ出来上がったチーズはまさに、
“製造するものではなく、自ら出来るもの”( パルミジャーノ・レッジャーノ協会資料より)
なのです。
さて、工場では生産者である、Bertinelli社長のGianni Bertinelli:ジャンニ・ベルティネッリ氏が
案内してくれました。
その工程は大きくは次のようになります。
1.前日夕方に絞ったミルク(表面に浮き上がる脂肪分を除いたもの)と早朝絞ったミルクを大きな釜(1,100KG!)で混ぜる。
2.これにil caglio(子牛の胃袋にある酵素)を入れる。
かき回していくと次第にミルクが凝固し始める。
その昔、牛乳を運ぶのに牛の胃袋を利用していたところ、その中にあった酵素と反応して知らずのうちにチーズが出来たとか・・・
先人の知恵ですね。
3.これを細かく砕きつつ、また熱するとチーズの塊が底にたまり始める。
4.塊は二つに分けて枠に入れる。
5.その日の内に定期的にひっくり返しては重石を乗せて脱水していく。
最後にParmigiano-Reggianoという文字と製造者の登録番号、生産年月が記された枠を入れ込み、次の日まで安置する。
類似品が出回るために、この文字には秘密の印字がしてあるとか。
6.翌朝、枠を外し金属枠に付け替え、計2日間、4時間毎にひっくり返す。
表又は裏面に丸い小さなシール(個別認識のため)を貼る。
これで生産者・製造年月・個別番号までが追跡可能という事になります。
7.飽和塩水(salamoia)のプールに19日間着けておく。
チーズに味を与え、長い塾生期間を迎えるに必要。
8.熟成庫(20℃)に安置すること1年。
その間、15日毎に表面を磨き、反転してまた安置、を繰り返す
この磨きの工程により表面が固くなるのです。
なので、決してワックスなどを塗ったのではなく、成分は中身と同じですから食べられるわけです。
9.1年目を迎えると協会の試験官がやってきてmartelettoと呼ばれる“たたき棒”を使ってたたきながら中に
空洞が出来ているかどうかを確認
確認してOKならば焼印を入れる。
(だめなものは横に筋を入れてB級品として出荷)
10.さらに1年程度熟成庫に安置し、ようやく出荷となる。
真中の焼印が協会の合格印、上の数字は生産者番号(ここは3030番)、
下の文字・数字は製造年月(2004年1月)。
そして側面いっぱいにPARMIGIANO-REGGIANOの印。
・・・とここまで説明してくれた社長はどうも最初っからゴホン、ゴホンと
咳を頻発していて辛そうでしたが、ついには脂汗までかく始末。
説明を聞きながらも私も申し訳ない気持ちで一杯でした。
それでも彼は息子に次の段取りまできっちりとぬかりないように指示して
おりました。
さすがに社長たるもの、大したものです。
その後、彼は自宅に戻り養生するとの事で、少しは安心したのですが・・・
後半は息子のNicola Bertinelli:ニコラ・ベルティネッリが近くにある
牛舎を案内してくれました。
続く。