作り手達
Pedrazzoli
San Giovanni del Dosso:サン・ジョヴァンニ・デル・ドッソ、という小さな村が
Mantova:マントヴァ県にあります。
ここへはSalumificio Pedrazzoli:サルミフィーチョ・ペドラッゾーリを訪ねに行きました。
既にPIATTIでの取り扱いを始めている“超希少黒豚の生ハム”生産者です。
希少で高価、ですが旨い(ここが大事)のでリピートが多い商品でもあり、どうしても生産者を訪ねたいと思っていたのです。
インポーターさんに予めお願いをして了承を得た後、コンタクトを取り続けながら、いくつかある工房のうちの一つを訪ねることにしました。
いくつかある、というのはこの生産者が自分達で豚を育てている事に繋がります。
商品ページにも書いていますが、黒豚、というのは少し前までは廃れる一方で需要が無くなっていったものですが、ここにきてやはりその味わいを再評価していこうという時の流れに沿い見直されてきたのは日本もイタリアも同様のようです。
20世紀末、パルマ大学と飼育団体により、ネロ・パルマの血を引く黒豚が山岳地帯一帯から集められ、研究を重ねた結果、純血ネロ・パルマ種が再度確立されました。
現在は、ネロ・パルマ協会を中心に普及活動に邁進していますが、まだその数たったの1000頭に留まっており、それで生ハムを作ろうという生産者自身が超レアなのです。
この生産者も月あたりの屠畜数は現在25頭と決めていて、つまりはハムにすると50本。
これ以上となると自分達が飼育している豚が途絶えてしまうというのです。
なので、この50本/月の美味を世界中で取り合う、というわけですね。
まさしく桁違いのレア物なのです。
Pedrazzoli:ペドラッゾーリ家のElisa:エリーザとは日本での試食会で面識があるのでそれを頼りに訪ねたわけですが、工房に入って主体的に説明をしてくれたのは工房の製造責任者であるValerio:ヴァレリオ氏。
今回訪れたのは飼育している森でもなければネロ・パルマ種の肉でハムをつくる、というところでは無かったのですが、彼の説明の明瞭さと情熱あふれる口上でグイグイ惹き込まれていきました。
この生産者はsalumificio:サルミフィーチョと頭に付きますが、これはサルーミ、つまり肉の塩蔵品を扱うという意味合いがあり、ハムのみをつくるprosciuttificio:プロシュッティフィーチョとは名乗っていません。
というのは、彼らが自分達で豚を育てているからです。良否あるものの原材料としての豚を飼育(山中で放飼)し、各々の質を吟味する事で生ハム以外にもコット、モルタデッラやサラミ等々に使い分けながら全てを使い切る事ができるのです。
豚腿肉を仕入れて生ハムだけを作ろうとする現代の多くのパルマハム生産者と大きく異なるのがこの点。
故に製造工程は毎日が同じではなく、月曜日から金曜日までの1クールで精肉から仕上げまで日毎の仕事が異なります。
また二次製品であるサラミについても大切に育てた限りある原材料ゆえ、特別に設えた地下セラーでAKARI:アカリと呼ばれる微生物の力を借りつつ踏むべきステップとかけるべき時間で作り上げるなど、通常の造り手とは一味も二味も違うなと実感するところです。
後に近くにある、彼らが経営するレストランでこれらを試食させてもらいました。
ハムが美味しいのは勿論知ってはいましたが、サラミやモルタデッラも相当に美味。
とはいえ、相当高価な事は間違いなく、これらをご紹介するのは難しいとは思いますが、彼らの思いのこもった製品たちは、たとえそれが生ハムという崇高な一次製品のみならずサラミやモルタデッラ等々の二次製品においても質の良さや大量生産品との違いをまざまざと見せつける事を認識しました。
うまいなー、これ
って感じです。
その一言を口に出すにあたり、随分と頭の中を巡るものがあったという事です。
黒豚そのものを見に行く前に、知るべきところを知る、それを思って彼らはこの場所を見せてくれたのかもしれません。