イタリア買付道中記 2012
イタリア買付道中記 2012 その14
シチリアに着けばいつものように、トマトのフィリッポに会います。
今回の旅程の基準となったのはトマトのフィリッポのところでドライトマトの天日干し風景を
ガッチリ写真に収められるタイミングに合わせる事でした。
これが結局7月初旬でのイタリア滞在に繋がり、ダラダラと滝のような汗をかき続けるきっかけとなったのです。
朝一から待ち合わせ、いつもの場所に向かいました。
既にトマトが目前一杯に並べられ、強い日差しの下、黙々と作業をするessicatore:エッシカトーレ
(エッシカーレとは乾燥させるの意味で、それをする人、つまりここでは天日干し職人です)の姿が
シチリアらしい感じだなといつも思います。
訪れた7月初めはまだハウスものの天日干しで、私がオーダーしている露地もののトマトはこれから熟していくのでまだ先です。
とはいえ、作業風景としては全く同じで、
・トマトを半分に手切りして
・塩を振って
・干す
だけですからいたってシンプルです。
でもトマトの品種、生育環境、塩振り加減、干し加減などは各々に違いがあるものです。
何年もの付き合いの中、徐々に私の好む出来具合を伝えつつ、それに応えてもらったきた、そんな関係があります。
もともと最初にもらったサンプルの出来がとても良かったのでその味に惚れて関係をスタートさせたわけですが、
artigianale:アルティジャナーレという手仕事に拘る作り手ならではの素晴らしい出来栄えの味わいと共に、
そのバランスの危うさを身を持って経験してきました。
毎年同じ出来栄えになるわけではなく、その事そのものをどう捉えるか、
どんな風に受け止めるかについてはいつもやり取りを重ねるところですし、
突きつけられた現実をいかに消化し、本物の良さ尊さを伝える事ができるかいつも試されているような気がしています。
そのためにいつもイタリアに足を運ばねばならない、終わりのない旅だとそんなふうに思っています。
ドライトマトはまさに私がこれで仕事を始めた大切な食材です。
これを目の前にするといつも色々な思いが重なってしまいます。
さて、ドライトマトの風景をカメラにばっちり収めたところでその場を後にし、ちょっと買い物。
フィリッポの作業場に納めてあったテラコッタが可愛かったのでその作り手のところに連れて行ってもらったのです。
シチリアの陶器と言えば一般的にCartagirone:カルタジローネや
S.Stefano di Camastra:サント・ステーファノ・ディ・カマストラが有名ですが、
意外とエトナ山麓に散在する小さな工房のものも良いのでちょくちょく買っているのです。
今回もまさにそんな感じで訪ねたのですが、ついついどっさり買い込んでしまいました。
とてもスーツケースに収まるわけもなく、別送することに。
たまには買い物もしないとねっ!っと言い訳がましく。
続いてフィリッポの工房に戻り試食。
「コウジ、お前なぁ、いつも同じ商品をオーダーしてくれるのは嬉しいが、
俺は他にもいろいろ作ってるんだ。
お前の好みもあるだろうけど、お客様が何を求めているかは試してみないとわからないじゃないか。
だから今回は新しいペーストを試せ。」
という半ば強引な話の中であれこれ試してみました。
その時美味しいなぁと思ったもの、それがこの秋初登場したペーストです。
試食でお腹一杯、そんなのがいつものパターンです。
それでも工房を後にして向かったのはお菓子屋さん。
Paste di Mandorla:パステ・ディ・マンドルラというアーモンドの粉を主体とした焼き菓子の美味しいところがあるので、
ちょっとお土産に・・・なんて算段でしたが、苦労して辿り着くと定休日。
うっかり、がっかり、でしかも汗だく。
もういい加減疲れ果てた感じで途中立ち寄ったのがシチリアに良くあるジューススタンド。
名前は忘れてしまっていますが、街中でも道端?!でも結構な頻度で目に
する8角形・・・くらいのキオスクのようなスタンドです。
ここでいつも飲むのは
・レモンをじゅぼぼぼと絞り、
・ガスたっぷりの炭酸水をじゅわーと注ぎ入れ
・塩をちょっぴり入れた
えらく素っ気無い飲み物です。
酸っぱいは塩っぽいはガス強いはでそれほど美味しいと思った事はついぞありませんでした。
←塩レモン炭酸水
※この真鍮の器具でレモンをギュッと絞っていました
(なぜかこれが無性に欲しくなって、使う当てもないのに後日市場で買ってしまいました)
しかし、滝のように流れる汗で水分以外にもいろんなものを失って弱った身体にはこれがホントうそみたいに
しっくりくる美味さなのです。
考えてみればシチリアの真夏の厳しい暑さをあまり経験してなかったので、
その真価が発揮されるようなシチュエーションになかったのかも。
いやぁ、こりぁあいいわ、ってな感じです。
あれこれ欲張りがちなシチリアの旅が少しずつ動き出しました。
続く。