Cerdo Ibérico:イベリコ豚
世界中に豚の品種、数あれど、イベリコ豚ほど特殊で高品質といわれる豚も珍しいです。
Sus Mediterraneusと呼ばれる初期の地中海沿岸の野生種に由来した豚と言われており、北西ヨーロッパから
移動を繰り返し、現在のスペイン南西部のExtremadura:エストレマドゥーラやAndalucia:アンダルシアあたりで
繁殖をしながらその地の気候風土に馴染むように変化を遂げてきたのがイベリコ豚です。
このイベリコ豚の食性は特殊で、樫の木の成る放牧地を自由に動き回りながら秋冬に成る樹の実を沢山食べて
栄養を蓄え、無い時期には粗食に耐えて過ごします。
本来持っていた豚品種の特徴に加え、この一連の環境ゆえに引き締まった赤身の強い肉質の中に湿潤する脂身によって
深い味わいと甘みが得られるとされています。
よって、このイベリコ豚のもも肉で作られるJamón:ハモン=生ハムは、このイベリコ豚の食性を重んじた
規格になっていると言えるでしょう。
以下は現在(2022年8月)の最新資料として2014年に制定されたスペイン政府公報 レアルデクレト4/2014による
イベリコ豚の規定です。
Dehesa:デエサ、Montanera:モンタネーラ
上記のイベリコ豚の食性を紐解くキーワードがあります。
Dehesa(デエサ):スペインの中央から南西地域に広がる放牧地。
地中海性気候により、夏は暑く乾燥し、冬は寒く湿潤で、森林と草地が組み合わさっており、森林には
コルクガシ、ホルムガシ、トキワガシなどが主で、その下層の草本は厳しい気候と低い地力に適応した種で
構成されています。
Montanera(モンタネーラ):上記のDehesa:デエサに放牧する事。
樫の実(ドングリ)が成る時期に豚を放牧するという目的で、期間(10月1日から12月15日)が
決められています。
このようにして広大な土地を歩き回り、沢山餌を食べて一定以上の体重を増やす事でイベリコ豚特有の肉質を
得る事ができるとされています。
血統
イベリコ豚の規定でもう一つ大きな決まり事があります。それが「血統」です。
先に述べましたように、イベリコ豚は食性が特殊であり、豚舎で飼育する家畜とは大きく異る「放牧」によって自らが
歩き回って餌を探し、秋冬に結実する樹の実を食べて脂肪・栄養を蓄え、それが無い時期の粗食に耐えることが出来る
原種に近い豚である事が必要なのです。
これを規定しているのが Mesa de Coordinación de la Norma de Calidad del Ibérico:
メサ・イベリコ委員会です。これによると
100%イベリコ
母豚:100% Ibérica:イベリコ種
父豚:100% Ibérico:イベリコ種
75%イベリコ
母豚:100% Ibérica:イベリコ種
父豚:100% Ibérica:イベリコ種の母と、100% Duroc:デュロック種の父との交配によって生まれた雄
50%イベリコ
母豚:100% Ibérica:イベリコ種
父豚:100% Duroc:デュロック種
というように規定されています。
Jamón Iberico:ハモン・イベリコ(イベリコ豚の生ハム)
上記に長々と述べましたが、これらの規定によって、つまりはどんな風な生まれと育ちによって得られる肉質が
大きく変わるという事を意味します。現在は以下のようにランク付けされています。
DE BELLOTA:デ・ベジョータ
血統と餌・飼育法に最も厳しい管理を経た豚でつくられる最上級の生ハム。
薄くスライスすることで豊かな香りが広がり、濃厚な赤身の旨味に加え、かみはじめるとじわりと滲み出る脂の
ジューシーさがたまりません。
ただし、血統と飼育法それぞれに厳格な数字が規定されており、それらを満たす豚そのものの数が極端に少ないため
スペイン国内でも誰しもが簡単に食べられるものではない希少で高価な逸品です。
本商品はこれにあたります。
DE CEBO DE CAMPO:デ・セボ・デ・カンポ
上記のベジョータほど厳格では無く放牧で自発的に餌を食べる他、穀類・豆類を主原料とした他の補完飼料も与えられ
一定の体重に至るまでの時間もベジョータに比べて短時間です。
味わいは、ベジョータに比べてマイルドで穏やかな仕上がりですが、やはりさすがにイベリコ豚らしく十分に深く
また噛むほどに滲みでるかのようなジューシーさが楽しめます。
ベジョータとの価格差も大きく、コストパフォーマンスの高い品と言えます。
DE CEBO:デ・セボ
穀類・豆類を主原料とした飼料を与えられ、最低限の広さを規定したゆったりとした空間の農場で飼育されます。
生産者 Jamónes Blázquez:ブラスケス社
1932年、Isidoro Blázquez:イシドロ・ブラスケスとTeresa Martin:テレサ・マルティンはスペイン北東部
Crespos:クレスポスにてイベリコ豚のハム製造に特化した事業として創業。
その後、イベリコ豚の生育に欠かせないオークとドングリが豊富な環境の放牧地である、スペイン南西部のExtremadura
:エストレマドゥーラとAndalucia:アンダルシア、さらには:Salamanca:サラマンカに3,000ヘクタール以上の草地
を所有、飼育を行うようなり、また積極的に工場の近代化に取り組み、徹底した品質管理と生産能力の安定化を図り
現在に至ります。
手切りでは無くあえてスライサーで薄くスライス
スペインのハムは古来より在る骨付きのものをCortador:コルタドールと呼ばれる専門職の手により手切りするのが
本来のスタイルです。
皮や脂身の処理、スライスの薄さ、一定さ等々をきちんと行う事で美味を引き出すわけですが、専門職の手に拠らない
場合は上手下手が出てしまうのも事実。
いろいろと悩みましたが、ピアッティではイタリアのハムと同じ方式を取ることといたしました。
これまで培ってきた経験をもとに、脱骨した原木をスライサーにてスライスする事としております。
骨付きを手切りでスライスするタイプ(肉の繊維方向に沿う流れ)と比べ、肉の繊維を断つ方向にスライスすること
になりますので食感が異なりますが、薄さの維持、ジューシーさの表現においては一定の品質を保つことが出来ると
思っております。
1枚1枚、ご注文を頂いてからお届けご希望時に合わせて出荷する日にスライスいたします。