昨日に引き続き、早起きして今度はBronteへ。
昨日に引き続き、これまたFilippo:フィリッポのドライブ。
さて、PIATTIで取り扱っている商品
・トロンチーニ
・ペースト・ディ・ピスタッキ
にはBronte:ブロンテ村のpistacchi:ピスタチオを使っています。
ピスタチオを使うならシチリアの、それもブロンテ村のものがよしとされているのは、その
・ほんのり甘味のある味
・しっかりとした芳香
・美しいエメラルドグリーン
が他のどれよりも優れていると言われているからです。
アラブの文化色濃いシチリアだけに、おそらくピスタチオも同じようにしてアラブから
移植されたものだと思いますが、うまくシチリアの気候風土にマッチしたのでしょう。
そのクオリティは本家をさしおいて世界中で有名となっています。
でもブロンテ村はエトナ山の麓、溶岩だらけのゴツゴツの岩場になっているので
収穫作業がはかどらないこと、2年おきにしか収穫できないこと、
等からそのクオリティに希少価値がつき、とても高級な商品になっています。
高級、希少・・・となればいろんな事を考える人がでても不思議ではないわけで、
これって本物??って事も良くある話です。
で、フィリッポに
「じゃあ、本物って何を信じれば良いわけ?」
と聞くと彼は
「信用できる生産者に出会うしかない。」
とそっけなく。
当たり前といえば当たり前、至極当然といえば至極当然。
それがわかれば苦労せんわい!っと言いたくなるような感じですが、
そこはフィリッポを信じて彼の取引先である生産者の元へと向かったのです。
11月のシチリア、雨、エトナの中腹・・・気温7℃、寒いです。
白い息を吐きつつ寒い寒い作業場へ入るとひっそりと仕事をする作業員の人達。
次第に雷が鳴り響き、電気も点いたり消えたりの中、作業員の手には一粒一粒のピスタチオが。
どうやら選別の最終段階のようでした。
ああ、最後はやっぱり人なんだなぁなどと思いながら、作業工程やら話を聞ける事になりました。
生産工程はざっとこんな感じです。
・ピスタチオの収穫は実が白くなってくる9月頃
・収穫した実は、先ずベルトコンベヤに乗せ、堅い外皮を取り除く
・これを100℃の熱湯に4分つける
・その後、Spella le pelle:皮むき工程へ
・80℃の風で乾かすこと5時間ほど
・冷風と振動でさらに乾かすと実が引き締まる
・選別機械にかけて大まかな選別を行う
・さらにひとつひとつ人の手で選別して完了
ここまでくると美しいエメラルドのピスタチオがまるで宝石か何かのように見えてきます。
さて、作業工程を聞きながらふつふつと湧き上がる素朴な疑問。
「ピスタチオが2年に一度しか実をつけないのはわかったとしても、
そんなに収穫量が少ないなら何で2年おきにしか収穫しないの?
半分ずつ植えて毎年収穫できる方が効率的なのでは?」
という事です。
それに対して事も無げにかなり込み入った回答をしてくれたのですが、例えて言うと
(あくまで数字は適当ですが・・・)
1.2年分を一度に収穫する場合(これを100として)
周囲に生息する虫の数は一定なので、虫が食べる数=虫の被害をうける数(これを10とすると)から
商品となり得る数は100-10=90となる
2.半分ずつ毎年収穫するようにしたとすると(これを50として)
周囲に生息する虫の数は一定なので、虫が食べる数=虫の被害をうける数(これを10とすると)から
商品となり得る数は50-10=40となり、2年分とすると40×2年分=80となる
結局は、出来上がる商品としてのクオリティと収穫量において最も効率的なのが
2年おきだという事になるからだそうです。
実際、近くの生産者が一度この実験を試みたそうですが、上記に書いたように、
上手くいかなかったのでやっぱり2年にしたとか、そんな話がありました。
数字そのものは絶対的な意味はないですが、概念としては理解できるなぁと私は納得しました。
かくして非常に高価なブロンテのピスタチオはグングン値上がりするばかりですが、
そうはいってもそれだけで商売が成り立つほどメジャーなものでもないというのが実際だそうで、
販売の機会をのがさないという意味でも、だからこそ輸入してでもイラン産等を彼らが売ることはままあるそうです。
事実、この生産者は、
「ブロンテ産もイラン産も両方扱っているよ。
顧客の要望も皆がブロンテ産ばかりを欲しているわけじゃないからね。」
っとさらりと言ってのけました。
正直です。
で当日、目の前でフィリッポが買っていったのはブロンテ産のものでした。
別に品質保証書をつけてどうとか、そういう事はないのですが、
このあたりが信頼関係というとこになるのでしょう。
ブロンテ産と書いてあるから美味しいと思うのか、
ああ、何だか美味しいなぁと思ったらブロンテ産だったのか。
私は(自分が取り扱う商品達が)後者になればいいなぁと思います。
さて、寒い寒い当日の天候でしたが、どうしても自分がピスタチオのジェラートを食べている、
という絵面が欲しかったのでフィリッポに頼んでジェラートを食べに行きました。
先にも書きましたが、11月のシチリア、雨、気温7℃、寒いです。
そんな中でジェラートを食べようなんざ、馬鹿野郎そのものではないかと
自分の事をpazzo:パッツォ(気狂い)だろ?っとフィリッポに問うと
「そういうのをシチリア弁でScimunito:シムニートって言うんだ。
pazzo:パッツォ(気狂い)& simpatico:シンパティコ(好感の持てる)
という意味だ。お前は真面目に仕事してるじゃないか。」
ま、そうですね。真面目にやってます。
そんなわけで写真をパチリと撮ってブロンテを後にしました。
かのブロンテのピスタチオのジェラートですから、多分?!いえいえもう壮絶に美味しかったです。
さて、フィリッポの多大なアシストによるシチリアの旅はここまでです。
彼のお陰で随分と沢山の生産者に会うことが出来、また彼と長い時間を過ごした事で
交わした会話も大きな財産となりました。
あとはシチリアの最後の夜を友人達との大切な食事にあてる事にします。
続く。