「チャオ、フィリッポ。お金貸して!訳はゆっくり説明するから。」
そう言ってローマの駅から乗ったIC(インテルシティ:特急)はシチリアのカターニアまでの間、
割合とこまめに停車していきました。
まさかこんなにも(予定時間計、17時間!)電車に乗るなんて考えもしなかった予定外の旅になりました。
・ラツィオ州 ローマを離れて丘陵地帯をゆるゆると進み抜け、
・カンパーニア州 世界遺産として有名なカゼルタの王宮が駅前にあって驚き、
ナポリの駅に着いた頃は2時間遅れでサレルノ辺りから海辺に近づき美しい海岸線を垣間見て、
・バジリカータ州 あらら?というほどあっという間に通り抜け、
・カラブリア州 ずっと海岸線をひた走り、
穏やかな鉄道の旅を楽しむ・・・ように心がけつつ、鞄をしっかり肌身離さずやっぱり緊張しながら
残り少ないペットボトルの水をチビチビ飲みながらすごしていた、という感じでした。
いよいよメッシーナ海峡が近づきました。
この海峡を渡ってシチリアに入ります。
ご存知の方も多いかと思いますが、日本の明石海峡と同じくらいの距離のこの海峡の連絡は、
全て連絡船により行われます。
列車とて例外ではなく、そのまんま連絡船に乗せて渡してしまうのです。
実のところ、シチリアで暮らしていた頃から今日まで、その姿を見た事がありませんでした。
というのはいつも夜行列車に乗って行き来していたのでここを通る頃は
いつも夜中や夜明け前で“真っ暗”だったからなのです。
そんな意味で、連絡船の中に列車が格納されているのを見るのは今回が初めてでした。
いよいよ海峡を渡り始め、列車が格納されてしまうと、ほんの短い時間ながら、
船の甲板にあがる事が出来る・・・そうです。
が、やっぱり、スーツケースを車内に置いたままで外に出る事など、その時の私には
恐ろしくて出来るはずもなく、残念ながら残る事にしました。
ま、入り口から降りて“直ぐに”写真を撮って“直ぐに”戻る・・・という情けない事は試してはみましたけれど(^^;
事の次第を同じコンパートメントに乗り合わせていた人達に話していたので、
哀れと思ってくれたのか、連絡船内にあったBarでエスプレッソを買ってきてくれました。
「ま、これでも飲めよ。くよくよしなさんな!」
って感じでしょうね。
砂糖を思い切りいれて飲みましたとも!
美味しかったなぁ・・・しみじみ。
シチリアに入り、タオルミーナを過ぎるとカターニアまであと少し。
海岸線を走りつつ垣間見る車窓の外にはFico d'India:インドのイチジクが成っているのが見えました。
「ああ、帰ってきた。ここまで来れば何とかなる。」
そんな風に思えて元気が出てきました。
続く。