イタリア買付道中記 2003 その15

「ローマで少し洒落たモノを見つけよう」

くらいの気持ちで予定していたからでしょうか、シチリアでの心構えとは少し異なる、少し甘い気持ちであったことが
引率してくれたシモーナに見事に見抜かれていました。

「ここでどうしたいの?」

ローマは都会です。
でも都会でならそれなりに何か見つかるかというと、そんなに簡単じゃないことはすぐに想像がつきます。
私は東京に住んでいますが、それですら何か見つけようと思ってもそれなりに考えを持っていないと
良いモノなんて簡単には見つかりません。

ましてや三日しかないローマ滞在。
明快なコンセプトが無いままに歩こうったって、短時間ではどうにもならないことが多すぎました。

それでも生粋のローマっ子であるシモーナは何とか思いつくような店に連れて行こうと、
効率的に廻ろうと苦心してくれたのでした。
彼女は、(彼女が)日本に留学していた際に知り合った友人です。
普段はカミサンとメールのやり取りなどを楽しんでいる大学生なので、食のプロでも何でもありません。

そんな場合にこそ、相手に伝えるハッキリとした目的や対象を示さないといけなかったのに、
その心構えがなかったのです。

「ここでどうしたいの?」

という質問に対して答え得る、自分のこれからのインターネットショップをどんな風にしていくかを
ズバリと答えるための心構えがなかったのです。
少なくとも、その時点では。

答えが定まっていない事を“イタリアの友人”に伝えることは至難の技でしたし、モノが見つからない焦りも加わって、
まさに“やせる思い”でした。

「いやぁ、ダイエットにはこれが一番!」

なんていってる場合じゃなかったんです(笑)。

でも、シモーナは私が随分いい加減な事を言っていたにも関わらず、そのひとつひとつに対して誠実に
返答してくれました。
そのやり取りについてこんな風に書き残していました。

「最近、つとに迷っている。
Siciliaでもそうだったが今日も同じ話になった。 
Simonaからも彼女の父からも、イタリアでは食べ物に関して外身より中身で勝負というところがほとんどだと言われた。
外にお金をかけるなどもってのほかということが底辺にあるらしい。 
イタリアに限ったことではないが、言うまでもないこと。 
しかしネット販売する以上、それをないがしろにするわけにはいけない旨を伝えると、
やはり、それはわかるがそこを自分の書き込みでいかに美味いかを証明すべきだという話になり、
少ない時間で見つけていく事にも非常に問題があるなど、自分が口に出して言わないが
心で葛藤していることをずばずば言われた。 
そこが問題なのだ。 
そう、それが問題。 
が、そんな時間はない。
たったの数日で、急になど。」

もっと掘り下げて考えよう、もっと原点を考えようと強く思いながら、その問答を繰り返したのです。
ローマ滞在の期間中は、ずっとこんな感じが続きました。
そしてまた、こんな風にも続けました。

「どうする幸司? 
どうしたい? 
どうするべきか。 
どうなるのか。 
考えろ。 
考えろ。 
考えろ。 
考えろ。 
考えろ。 
考えろ。 
まだ二日ある。 
たった二日しかない。」

途中で食べるジェラートは甘く美味でしたが、どこか苦く頭がグルグル廻ってどうにかなりそうでした。

続く。