イタリア買付道中記 2003 その11

「Koji、今度はもっとゆっくりできる時に来なさい。」 

シチリアにいた頃にお世話になったホストファミリーのフィリッポ一家。
中学校の先生(今や校長先生)をしているフィリッポは学期末の5月は本当に忙しいようで、シチリアーノなのに珍しく?
朝から夜遅くまで仕事の連続なのでした。

加えて、奥さんのサンティーナは階段から落ちて手首を骨折。
グルグル巻きの手では得意のお料理も出来ないでいたのです。 

「今は忙しいから君が来ても何もしてやれないんだ。」

私がこの旅でシチリアに帰ると伝えた時にフィリッポから帰ってきた答え。
私は勝手にネガティブな方向にとらえて怯えていました。

quello che avete fatto per me:あなた方が私にしてくれた事

6年前にシチリアを去る前に辞書を引いて書き記したフレーズです。
彼らが私に教えてくれたのは、正直な心で接する事、裏表が無い事。精一杯のホスピタリティ。

学校を抜け出して(さすが!校長先生^^)いろいろ廻ってくれたり、使えない手で食べきれないほどお料理を
用意してくれたりetc 
この一家とのつながりが確認できなければこのビジネスのスタートを切る事が出来ないと不安一杯、いっぱい、いっぱいで
戻ったシチリア。
全ての迷いが吹き飛んだ事を確認する事が出来ました。 

「Koji、今度はもっとゆっくりできる時に来なさい。」 

その言葉通りに、今度は時間をとって彼らを訪ねたいと思っています。
トマトが熟す頃、ブラッドオレンジが熟す頃、あるいはマッタンツァの頃いろいろありますが、
じっくり見て話が出来る頃を選んでまた戻ってこようと思っています。

友人の待つローマへ行く為に、シチリアとはしばしのお別れです。

「Gioia:ジョイア。」

愛する息子や娘にマンマがかける言葉。
私にも同じようにかけてくれたフィリッポ一家ともしばしのお別れです。


駆け足で廻ったシチリア。少し感傷的になりながら列車の駅に向かいました。
フィリッポがくれたオレンジ一杯のみかん箱をかつぎながら。。。
夜10:00発の夜行列車に飛び乗った私は、涙を流しながら手を振ってフィリッポとサヨナラする。。。はずでした(^^; 

どうやらメッシーナ海峡あたりで何やら故障があったとか。。。という良く解らない理由で
ひたすら待ちつづける事、 2時間あまり。
その内、フィリッポも疲れて 「じゃあな!」 と言って帰りました(^^;
私もいつ動くか解らない列車の窓から疲れた顔を出して
「じゃあ!」 と手を振ったのでした。

・・・こんなもんでしょう、シチリアでは。
・・・よくあることです、シチリアでは。
まっ、イイか
とひたすら待つことにしたのです。 

続く。