PANARO

IL PANARO:イル・パナーロ

 Marche:マルケ州、Urbino:ウルビーノにて創業された小規模で良質な生産者。
 Monia:モニアとMichele:ミケーレの夫婦が少しずつ大きくしてきたという感じがそのまま伝わってくるような工房です。

 この生産者に辿り着いたきっかけは、日本で知り合ったイタリア人家族との交流でした。
 奥様の出身がEmilia Romagna:エミリア・ロマーニャ州の“ロマーニャ地方(東側)”の出身で、Piadina:ピアディーナと呼ばれる、“ピタパン”や“ナン”、あるいは“ガレット”と似た粉物を良く食する週間があり、実際に作ってくれたり、あるいは焼くだけにまで整えたレディメイドのタイプを買ってきてくれたりしました。

 これにハムやサラミ、チーズやペースト、あるいはグリルした野菜等々、お好みを乗せてあとは巻いて食べるだけというもので、家庭やアウトドアで気軽に楽しめる、ポピュラーな食べ物です。

 その素朴で飽きの来ない美味しさは、むしろピッツァよりも親しみやすいのでは?!と思うほどです。

 で、この奥様がある時

 「こういうのもあってね、Crescia:クレーシャって言うの。Piadina:ピアディーナとちょっと違っていて、卵と胡椒が入っていて味が良くてミルフィーユ状になってて食感も楽しいのよね。ただ、これはロマーニャ地方ではなくて隣のマルケ州のUrbino:ウルビーノのものなんだけどね。」

 という触れ込みで食べさせてくれたのが事の始まりです。

 「ピアディーナも勿論美味しいけど、このクレーシャっての、とっても美味しいね!」

 と、そんな感じで興味を持ったのでした。
 その時の包装紙に書いてあったところに連絡をして今回の訪問に至ったというわけです。

 Monia:モニアとMichele:ミケーレの夫婦が努力しながら小さな工房を少しずつ大きくしてきたという感じの会社で、まだビジネスの接点も無い私に随分と時間を取ってフレンドリーに対応してくれました。

 期せずしてここを訪れる前にウルビーノの街で学んだ、Federico da Montefertro:フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ公がその地の食において表現した“贅沢さ”がまさにこのクレーシャに繋がっていたなんて、ちょっと感動的ですらありました。

 この“卵をいれる事によって贅沢さ”が表現されたクレーシャは当初、宮殿の中だけで食されていたのですが、徐々にその宮殿の外に出回り始め、今やウルビーノ名物にまでなっているのです。

 それから、生地を丸めてそれを伸ばして作ったピアディーナとは異なり、丸めた生地を一旦紐状に伸ばしてからこれを再度丸めて伸ばして作ることでミルフィーユ状になるクレーシャは、温めてから冷えてもクリスピーになるだけで、固くなって食べにくくなるピアディーナよりも楽しみ方にヴァリエーションがあるという点も見逃せません。

 工房を一通り説明して廻ってくれた後は、実際にあれこれ食べてみようと試食までバッチリ用意してくれました。食べて話して(というか聞いて)随分と実りの多い訪問となりました。

 今後への期待も含めて挨拶をし、工房を後にしました。
 マルケ州でのはじめの一歩は思っていた以上に有意義で、こんな事ならもう少しこの場に居続けたいと思うほどでした。
 きっとまたこの地を訪れることになると思います。

 彼らが作成した素敵なビデオもあります。